ブラジルは中南米に位置している国であり、スペイン語が使われているイメージを持たれている方もいるかもしれません。たしかに中南米のその他の国々との経済・文化交流も盛んであり、スペイン語圏を含むさまざまな地域から移住してきた人も多いです。
ただし、実際のところはどうなのでしょうか。
今回は公用語をはじめ、英語やスペイン語が通じるかどうかなど、ブラジルの言語事情について解説していきます。
ブラジルの公用語は?
ブラジルではポルトガル語が公用語に指定されています。中南米においてポルトガル語が公用語として使われているのはブラジルのみ。ブラジルにはさまざまな民族が暮らしており、100種類以上もの言語が使用されていますが、公用語はポルトガル語で統一されています。
総務省統計局「世界の統計2023」によると、ブラジルは世界で6番目に人口が多い国であり、ビジネスにおけるポルトガル語の需要は多いです。
ブラジルでポルトガル語が使われるようになった理由
それではなぜブラジルではポルトガル語が公用語となったのでしょうか。
その理由としてはブラジルが歩んできた歴史が関係しています。それを紐解く鍵がポルトガルとスペインの関係です。かつてこの二か国は世界の覇権を巡って争ってきました。1494年にはスペインとポルトガルの間で、それぞれの領地の取扱いについて決めるトルデシリャス条約が締結されています。
この条約で西経46度37分の東側をポルトガルが、西側をスペインが支配することになったのです。このことで、南米ではブラジルだけがポルトガルの支配地域となり、その名残としてポルトガル語が使用されています。
ブラジル以外でもポルトガル語は公用語になっている
ポルトガル語はポルトガルとブラジルで使われているイメージがありますが、使用されている国は他にもあります。それが、ポルトガル語公用語アフリカ諸国(Países Africanos de Língua Oficial Portuguesa、PALOP)と呼ばれる以下の国々。
- アンゴラ
- モザンビーク
- ギニアビサウ
- 赤道ギニア
- カーボベルデ
- サントメプ
- リンシペ
中でもアンゴラはアフリカ大陸で一番経済力があるとされる南アフリカに匹敵する経済規模を持ちます。さらに天然資源に恵まれた国もあり、今後もビジネス面で注目されるでしょう。
ただし、これらの国々で話されるポルトガル語は、ブラジルで話されるポルトガル語とはやや異なるため注意が必要です。
国内でもポルトガル語の需要は増えている
ブラジル人とビジネスで接する機会があるのは、ブラジルだけではありません。日本でもブラジル人の人口が多く、ポルトガル語を使う機会があります。日本国内に在留しているブラジル人の人口は2022年時点では209,430人であり、国内では多い方です。
主に大手自動車メーカーの工場での就労を目的として来日することがあり、愛知県、静岡県エリアでは多くのブラジル人を見かけます。地域によっては商業施設の案内にポルトガル語が使用されているため、国内でのポルトガル語の需要はあると言えるでしょう。
また学校ではブラジルの子どものためにポルトガル語の教材も活用されており、多くのブラジル人は日常生活ではブラジルと同様にポルトガル語を使って生活しています。
ブラジルでは英語やスペイン語は通じる?
それではブラジルでは英語やスペイン語は通じるのでしょうか。詳しく解説していきます。
英語の通用度
英語は世界中で学習されている言語であり、義務教育でも英語が選択科目に指定されています。国際空港や主要な観光地には英語が話せるスタッフが待機しているため、観光目的で来られる場合は英語のみでも苦労することはあまりありません。
また最近ではサッカーワールドカップやオリンピック・パラリンピックなどの国際的なイベントの誘致も行われているため、英語教育も推進されています。しかし、それでも英語だけでは苦労することが多いです。
ブラジルにおけるビジネスの拠点であるサンパウロやリオデジャネイロであっても、英語が話せない人は多く、ポルトガル語を使用しなければなりません。そのため、ブラジルでビジネスを展開していくためにはポルトガル語は必須であると言えるでしょう。
スペイン語の通用度
前述したように、スペイン語は公用語ではないため、ブラジルではあまり使用されていません。スペイン語を話す地域は、一部の移民した人たちに限定されています。
周辺のスペイン語圏の国々との交流は多いものの、ブラジルではスペイン語はほとんど通じないと言っていいでしょう。
ただ、ポルトガル語とスペイン語はフランス語やイタリア語と同じく、ラテン語からできた言語です。そのためこれまでスペイン語を学ばれたことのある方ですと、ポルトガル語は学習しやすいでしょう。
ポルトガル語の特徴や注意すべきポイントは?
ポルトガル語にはどのような特徴があるのでしょうか?注意点も含め、解説していきます。
ポルトガル語の特徴
他のラテン系言語に共通することですが,不規則動詞が多いためや時制が多いため、慣れていない方は苦労することがあるでしょう。
例えば、以下にポルトガル語の不規則動詞の具体例を挙げます。
・「ser」:「~である」
「Eu sou」:「私は~である」
「Tu és」:「あなたは~である」
「Ele/ela é」:「彼/彼女は~である」
・「ir」:「行く」
「Eu vou」:「私は行く」
「Tu vais」:「あなたは行く」
「Ele/ela vai」:「彼/彼女は行く」
ただし、主語を省いても動詞だけで会話が通じることもあります。
発音に関しては日本語とは異なる点があるため注意が必要です。まず、母音の発音が日本語と異なります。
a であれば、「ア」と「アウ」の中間の音で発音しなければなりません。具体例には「casa」(カァゥス)『家』や「falar」(ファゥラー)『話す』などが挙げられます。o は「オ」と「ウ」の中間の音で発音され、「porta」『ドア』は(ポゥルタ)です。
また日本語にはない子音があることにも気をつけなければなりません。lh は、「リャ」と発音され、「ilha」『島』の発音は(イリャ)になります。ç は、「セ」と発音され、「açúcar」『砂糖』は(アソゥカー)です。
ブラジルのポルトガル語はヨーロッパのポルトガル語と異なる
ブラジルで使用されているポルトガル語は、ポルトガルで使用されているものとは異なる点があります。そのため、ブラジルで使用されているポルトガル語はブラジルポルトガル語と呼ばれることも。これまでにポルトガル語を学ばれてきた方でも、この点を抑えていないと混乱してしまうことがあるので、注意が必要です。
例えば、靴下という単語はポルトガルではpeugas、ブラジルではmeiasと表されます。
また、発音にも注意しましょう。ポルトガル語でおはようという意味の単語「bom dia(ボン・ヂーア)」の「di」の部分をポルトガル人は英語の「th」の発音に近い「 ði」と発音する一方で、ブラジル人は「ヂ」に近い「dʒi」と発音します。
【まとめ】ブラジルはポルトガル語が公用語。ヨーロッパで話されるポルトガル語とは異なるので注意
ブラジルではポルトガル語が公用語として活用されています。空港や観光名所などでは英語が話せる人もいますが、多くの場合はポルトガル語でないとコミュニケーションが難しいです。
またブラジルのポルトガル語はヨーロッパのポルトガル語とは単語と発音に違いがあります。そのため、ブラジルでビジネス展開するにはブラジルポルトガル語ができる人材が必要です。
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