立身出世とアメリカン・ドリーム

アーキ・ヴォイスのコーディネーターです。

先週、トランプ氏の大統領
就任式典が行われました。
今週、NY株式市場では
NYダウが史上初めて2万ドルを突破。

明るいニュースもある中、
トランプ氏はTPP離脱や、
メキシコに対する壁建設の
大統領令に署名しました。
壁、本当に作るんですね・・・

さて、今回のトランプ氏当選や
英国のEU離脱など、
一連の出来事の背景には、
格差に対する民衆の不満があると
言われています。

格差に関連して今月16日、
面白い調査結果が発表されました。

NGOオックスファムの調査で、
世界で最もリッチな8人の資産が
世界の下位半分(=36億人)の合計額と
ほぼ同じになる、とのこと。

「世界富豪トップ8人の資産、
 貧困層36億人分と同じ」
 http://www.bbc.com/japanese/38633737
 (BBCの記事にジャンプします)

上記の記事によると、
世界の富豪は下記の8人。

1位 ビル・ゲイツ氏(米国)
   マイクロソフト創業者 750億ドル

2位 アマンシオ・オルテガ氏(スペイン)
   ZARA創業者 670億ドル 

3位 ウォーレン・バフェット氏(米国)
   バークシャー・ハザウェイ筆頭株主 608億ドル

4位 カルロス・スリム氏(メキシコ)
   グルポ・カルソ創業者 500億ドル

5位 ジェフ・ベゾス氏(米国)
   アマゾン創業者 452億ドル 

6位 マーク・ザッカ―バーグ氏
   フェイスブック共同創業者 446億ドル

7位 ラリー・エリソン氏
   オラクル共同創業者 436億ドル

8位 マイケル・ブルームバーグ氏
   ブルームバーグ創業者 400億ドル

以上、しめて4262億ドル、
1ドル=114円で計算すると、
48兆5868億円。

ちょっとケタが多すぎて
イメージがわかないのですが・・・
メキシコとスペインをのぞいて、
すべて米国に集中していますね。

個人的には、格差も問題なのですが、
格差が「固定化」しているかどうかが、
ポイントだと考えています。

先日の『日本経済新聞』で、
米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授が
おおよそ次のようなことを言っていました。
(『日本経済新聞』、2017年1月22日、11面)

・米国で経済的な格差は以前からあったが、
 人々は生活がいずれ上向くと考えていたため、
 これまでは格差があまり問題にならなかった。

・かつては貧しい出であっても、
 のし上がることができた。これは
 アメリカン・ドリームと言われる。

・しかし現在は、アメリカン・ドリームが
 成り立たない。米国では貧しい生まれだと、
 7割が中間層にも上がれない。
 上位20%に入れる人は
その中でもわずか4%のみ。

・アメリカン・ドリームの危機が、
 極端なナショナリズムやポピュリズムを招く。

これを読んで、
10年以上前に読んだ本を
思い出しました。それは、
佐藤俊樹『不平等社会日本』(2000年)。

書かれていてるのは、
日本では社会階層が連鎖する、
といったことでした。

記憶がおぼろげですが・・・
この本では社会調査を用いて、
日本の階層が分析されています。
それによると、
日本は世代間(親と子など)で
階層の移動がしにくくなっている、
といった話でした。

つまり、階層が固定化して、
「カエルの子はカエル」、
自営業の子は自営業に、
サラリーマンの子はサラリーマンに
なりやすい、といった話・・・

加えて、貧困層から富裕層へ
階層間を移動する「立身出世」が
現代の日本には少なくなってきている、
と指摘されていたようにも思います。

当時の実感として、
二世タレントや二世議員などが
話題になっていたので、
この指摘には納得した記憶があります。

日本で15年以上前に
指摘されていたことが
現代の米国の状況と重なります。
階層の固定化により、
「立身出世」や「アメリカン・ドリーム」が
難しくなっている、といった具合に。

同時に、大学時代にはまっていた
パチンコのことを思い出しました。
大当たりがしやすいホールと
そうでないホールで、客の入りが全然違いました。
(今もそうなのか、わからないですが)
隣の人が大当たりしているのを見て、
自分も含めて周囲が「よし、自分も」と思い、
お金をつっこんでいく・・・

パチンコのホールと社会を
比べて考えるのは不謹慎ですが、
「大当たり」や「階層間移動」
(立身出世やアメリカン・ドリーム)が
身近に感じられない社会は
不満がたまりやすいのではと考えます。

8人の富裕層が世界人口の半分に
匹敵する資産を持ち、
さらに世代を越えて格差が連鎖していく・・・

米国や英国の状況を見て、
こんなことを思いました。