パナマ文書

アーキ・ヴォイスのコーディネーターです。

さて、今月27日・28日に
「伊勢志摩サミット」が
三重県で開催されます。

今回弊社は、
伊勢志摩の特集を、
3言語に翻訳しました。

この伊勢志摩サミットで
取り上げられると言われているのが、
「パナマ文書」に端を発する
タックスヘイブン(租税回避地)の問題です。

今回はこの話題を取り上げてみたいと思います。

そもそも「パナマ文書」とは、
タックスヘイブンでのペーパーカンパニー設立を
専門とするパナマの法律事務所
(=モサック・フォンセカ)から流出した顧客、
約21万4000社の情報のことを指します。
総数は総数は1150万件に上ると言われています。

世界各国の首脳の名前もその中に挙がっていて、
アイスランド首相やスペイン閣僚が
辞任に追い込まれています。
またリストには日本国内を住所とする
約400の個人や企業の情報が含まれていました。

ところで、このような情報が一体、
どのようにして流出したのでしょうか?
様々な推測・憶測を呼んでいます。

最初の流出経緯は次のようなものでした。

昨年2015年8月に、
『南ドイツ新聞』に匿名の通報者から
フレデリク・オーバーマイヤー記者に宛てて
2.6テラバイトのデータが送られてきました。

フレデリク・オーバーマイヤー記者は
自分と家族の身の安全を考えて、
各国記者と協力してデータを分析することにします。
そのため、データはワシントンD.C.にある
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に送られました。

80カ国の約400名のジャーナリストが分析に加わり、
日本からは朝日新聞と共同通信の記者が参加しています。
2016年4月3日に分析の結果が発表されました。

さらにICIJは現地時間5月9日
(日本時間では10日未明)に
パナマ文書の全容を公表するとしています。

 (下記、ICIJのサイトにジャンプします。
  https://panamapapers.icij.org/
  なお、ICIJの「オフショア・リークス」では
  過去の法人や個人のデータベースが公開されています)

このように大量に流出したパナマ文書ですが、
タックスヘイブン(租税回避地)の問題に
直結するため、大きな話題になっています。

ちなみに、タックスヘイブンとは、
「税金がない(ほぼない)国や地域」を指します。
ヘイブンはもともと「避難港」という意味の英語。
特徴としては、まともな税制がない、
固い秘密保持法制がある、
金融機関やその他の法規制が欠如している、
といったことがあります。

具体的なタックスヘイブンを
オフショアの金融センターも含めて、
以下のように分類してみました。

(A)国の場合:
 パナマ、香港、マカオ、シンガポール、
 スイス、ルクセンブルク、ベルギー、
 オーストリア、モナコ、バーレーン等

(B)旧植民地や英王室属領:
 ブリテン島近郊のジャージー・ガーンジー・マン島、
 ケイマン諸島、バハマ、バミューダ、
 BVI(ブリティッシュ・バージン・アイランド)、
 マレーシアのラブアン島、等

(C)先進諸国の中(ドメスティック・タックスヘイブン)
 ロンドンのシティ、アメリカのデラウェア州等
 (デラウェア州ウィルミントンにはフォード、GE、
  コカ・コーラ、グーグルなどが本社があります)

 (以上、志賀櫻『タックス・ヘイブン』を参考にしました)

上記を見ると、タックスヘイブンは、
イギリスと密接な関係を持っていることがわかります。
ロンドンのシティ(C)や、その周辺にある
ジャージー、ガーンジー、マン島(B)、
また、海外領土であるケイマン諸島やBVI(B)、
加えて元イギリスの植民地シンガポール・香港(A)など。

志賀櫻『タックス・ヘイブン』によれば、
BVIの背後にはMI6(英国情報部)がいるとされ、
さらにイギリスはシティの近郊にある王室属領
(ジャージー、ガーンジー、マン島)を利用することで、
シティがイギリスのGDPの20~30%を
稼げるようにしているといいます。
なお、シティはイギリスの租税収入の10%を担っています。

英国が国際金融において存在感が大きいのは、
全世界の富の10%が集中しているともいわれる
タックスヘイブンで圧倒的シェアを
維持しているからだといわれます。

他方、今回の舞台、パナマは自国通貨がなく、
米ドルが流通しているほどアメリカに近い国です。

そのため、「パナマ文書」はアメリカによる
イギリスへの攻撃だと推測される方もいます。
果たしてそうなのでしょうか。

このタックスヘイブンが問題になるのは、
以下が考えられます。

(1)納税義務を唱える政治家や
   国家元首が資産隠しをしている可能性

(2)犯罪やテロの資金が
   マネーロンダリングされている可能性

(3)個人や法人による脱税

こうしたタックスヘイブンにまつわる問題が
パナマ文書から明らかになりつつあり、
来週火曜(日本時間)の全容発表が
世界にどのようなインパクトを与えるのか、
またサミットでどのように取り上げられるのか、
注目したいと思います。

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